スタッフブログ
2013.03.25
たとえ偽物だとしても
毎週、Jackグループ会員向けに送っているクモデコラムをお送りします。99号です
たとえ偽物だとしても
バスケットボールには背の高い選手の方が有利である。しかし背の高いことがバスケットというスポーツに向いているかどうかは別問題である。評価基準と評価そのものを混同すること。生活においてこの局面は多々ある。以前、生産地偽造問題が話題になった。私の故郷の飛騨高山でも飛騨牛の偽装問題があった。国産和牛を飛騨牛と偽って販売をして業者が摘発されたのである。美味しい牛肉のブランドに飛騨牛は含まれるが、和牛が美味しくないというわけではない。事実、偽装は犯罪であり罰せられる必要があるがその店の飛騨牛と偽って販売していた和牛の味は絶品だったらしい。
「本物論と偽物論」というのはどの世界でもあることだ。住宅事業でも「自然素材」がある。「合板フローリングは木質であるが無垢ではない。ボンドで固められた床材はすなわち偽物である。偽物を提案することなく、本物素材である無垢フローリングを提案すべきである。」このロジックはすなわち、「本物素材を提案する企業は本物企業であり偽物を提案する企業は偽物企業である」という結論となる。
「こっちが本物であっちは偽物」そんな見えないラインのどっちにいるか。それが評価となりうるのか?という疑問が常にあった。そんな時、ラジオからMr.Childrenの「イミテーションの木」という歌が流れてきた。「イミテーションの木の下を少年が飛び跳ねている。それを見た誰かの顔がほころぶ。情熱も夢も持たない張りぼての命だとしてもこんな風に誰かをそっと癒されるなら。本物じゃなくても君を癒せるなら」私は忘れることのできないあるお客様のことを思い出した。
2005年こんな春の桜の頃。自然素材提案が本物だ!と持てはやされ熱に浮かれた時期があった。そんな折、1件のリフォームの反響先へ伺った。1人暮らしのおばあちゃんの自宅であった。依頼は6畳和室の改装。自然素材の提案にはうってつけである。
「孫が毎年、この時期に遊びにくるからね。せっかくだからキレイな部屋にしたいのよ。おばあちゃんの家って汚いねとか思われたくないじゃない」と微笑ましい笑顔で話をしてくれた。聞くところによると予算はギリギリ自然素材の提案ができる範囲であったので私は自然素材の提案をした。私の熱意を知って納得をして下さった。しかしふと顔を落とし、おばあちゃんはこうも言った。
「予算がかかるのは仕方ないわね。でもできれば孫のために何かおもちゃでも買ってあげたかったわ」
私は次に出そうと思っていた言葉を失った。自然素材を提案すれば私はその行為は評価されるであろう。永きにわたりきっとその良さは理解をして頂ける。しかしこのおばあちゃんとお孫さんの関係はいつまで続くだろうか。孫を思う気持ちがあればこそ、孫が遊びにきてくれる限られた時間に寄り添っていたい。そんな気持ちが痛いほど突き刺さってきた。
「何やってんだろ、オレ」と思った瞬間、「おばあちゃん、提案を変えます。今回はコストを抑えてリフォームしましょう。残った予算でお孫さんに何か買ってあげてください。」と口から言葉が出た。
私は低コストな偽物と呼ばれる素材の提案をした。そしてリフォーム工事を完了した。偽物素材の提案。しかし何故か心の中はすっきりと晴れ渡っていた。ほどなくおばあちゃんから手紙が届いた。キレイにリフォームをした部屋で孫と一緒に映っている写真であった。そして手紙には「ありがとう」という言葉。偽物の提案をした私は偽物のリフォーム業者だったかもしれない。でもおばあちゃんとお孫さんの笑顔は本物だった。「これでよかったんじゃないかな。」その時私は会社設立の時に決めたスローガンを思いだした。「ありがとう」と「うれしい」の一杯詰まった会社を目指そう。私が本物じゃなくても、たとえ偽物だとしてもそこのある笑顔が本物であれば役目は果たせたのかなと思う。
もうすぐ満開の桜の木の下。ベンチに腰を掛けそんなことをふと思い出していた小春日和の午後。
CATEGORYカテゴリー
SERVICE
ロビンのリフォーム・リノベーションサービス一覧
ロビンは、換気扇レンジフードの交換リフォームから、設計士がご提案するフルリノベーション、注文住宅まで幅広く対応しております。
それぞれのサービスの紹介、施工事例、お客様の声などをご覧ください。