木製サッシから家を創る。私が一目惚れした木製サッシの魅力や価格と事例
Robinの蜘手です。
私が新築事業を始めようと、住宅雑誌やインテリア雑誌など米国や北欧などの事例を多く見て、「この家の雰囲気、なんかいいな」と思ったものをよく観察すると「木製サッシ」が使われていることに気づきました。
そして実際に木製サッシが利用されている完成見学会やモデルハウスへ行き、この目で見て、木製サッシのデザインと性能に一目惚れをしたのです。
そして私は木製サッシについて調べました。
どんな種類があるの?メーカーは?そもそも日本製なのか?輸入なら価格はいくら?
実際に調べてみると、メリット、デメリットなどが色々とわかりました。利用できるシーン、できない地域。価格が抑えられるサイズ、価格が比較的高価になってしまうタイプなど理解した上で、「これはぜひお客様にも提案したい」と思うようになりました。
Robinの新築事業はほどなくスタートするのですが、「セルロースファイバー」と「木製サッシ」と共にスタートしたといっても過言ではありません。
(私も現場を離れ、今ではなかなか社員も提案してくれませんが、、、)
セルロースファイバーの記事はこちら
最強の断熱材セルロースファイバーは防火・防音・調湿・防虫もスゴイ
ともあれ、私がイチオシする木製サッシを皆さんにご紹介したいと思います。
目次
木製サッシって何?
サッシというのはいわゆる「窓部」のことで、よく耳にするのは「アルミサッシ」や「樹脂サッシ」だと思います。
アルミサッシは窓枠の部分がアルミ製、窓枠部分が樹脂性のものを樹脂サッシと呼びます。
日本の住宅は以前はアルミサッシが主流でしたが、断熱性能などが重視されるようになり樹脂サッシの種類も多く出揃っています。外側がアルミ、内側が樹脂といった複合サッシもあります。
国内の代表的サッシメーカーは、リクシル、YKK、三協アルミなどで、アルミサッシ、樹脂サッシ、複合サッシの種類も豊富です
しかし、20年前は国内で樹脂サッシを製造しているメーカーはほとんどありませんでしたので、輸入の樹脂サッシを取り扱ったこともあります。
木製サッシは「窓枠」が木製でできているサッシを言います。インテリアデザインを無垢木を基調にした場合の風合い、高い断熱性、結露防止など様々な魅力がある木製サッシ。では木製サッシについて具体的に知識を深めていきましょう!
木製サッシのオススメのメーカーは?
まず木製サッシと聞くと、木製建具と混合される方もいらっしゃるかもしれません。昔の日本家屋では窓は木製でしたが、それはただの木製の枠にガラスが入ったもので、隙間もあり、がたつきのあるものでした。
現在の木製サッシは技術も進み、「木製建具のイメージ」はもうありません。ここでRobinが採用してきたオススメのメーカーを紹介します。
1904年創業 米国を代表する輸入サッシ マーヴィン
http://www.marvinjapan.co.jp/history.html
Robinでも最初に採用したのがこのマーヴィンでした。質感、気密性、種類の豊富さなど窓選びがこんなに楽しいなんて、と感じたものです。利用するとわかるのですが、ガッチリした造りが魅力ですが、ダブルハングや大開口の窓は開け閉めが重いと感じる人もいます。(私は気になりませんが)室内側は木製、室外側は「押出し成型アルミクラッド」と採用してあるのが特徴です。
マーヴィン社のもう1つのブランド インティグリティ
http://marvin-integrity.jp/about.html
Robin社で採用した木製サッシで、もっと多いはこのインティグリティです。
インティグリティは実はマーヴィン社の中にあるブランドの1つ。マーヴィンの違いは室外側がアルトレックスという樹脂が使われていることです。
見た目には少しシャープになった印象で、価格もマーヴィンよりは低価格に設定してあります。デザインや種類はマーヴィンの方が豊富ですが、一般住宅に使うのであれば十分です。
高断熱と優しい質感の木製サッシ トリプルガラスのレノホンダ
木製サッシとトリプルガラス、、、といえば1990年代に大変人気のあったスウェーデンハウスと同じ仕様になります。当時Robin社は北欧風を売りにしていたわけではありませんでしたが、デザインと高断熱ということでスウェーデンハウスと比較されることが度々ありました。
今思えば大変光栄なことなのですが、顧客の方が大きく魅力に感じていたのがこの木製サッシ、トリプルガラスです。トリプルガラスとは窓が3枚セットされていることでペアガラスに1枚、加えた感じです。
採用は数件でしたが、トリプルガラスをご希望の方にはこのレノホンダを採用していました。特徴は外部も木製仕上げで回転窓が多いことです。
機能性における木製サッシの魅力・メリット
上記、サッシメーカーを利用した感想を主観とし、まずは機能性における木製サッシの魅力やメリットについてご紹介します。
窓枠、ガラス部が結露しない
窓サッシとは「窓」と「窓枠」が組み合わさった商品で、窓部の結露については「窓枠の結露」と「窓の結露」を別々に考えなくてはいけませんが、ここでは分かりにくいので、窓部についてご説明します。
結露は外気と室内との温度差、それに飽和水蒸気量によって起こる現象です。結露はカビや腐食の原因にもなる厄介な現象です。特に木造住宅では放置しておくと経年劣化が加速する遠因にもなります。
結露は先述したように、「外気温と室内温度の温度差」と「室内の飽和水蒸気量」が関係しています。考えてもわかるように、金属は熱をよく通しますから、冬になるとアルミサッシの窓枠はとても冷たくなります。室内の湿度が高いと窓枠はベタベタに濡れ、結露が発生します。
樹脂サッシはその点、アルミよりは熱を通しにくい性質があります。さらに熱を通しにくいのが木材です。超寒冷地でログハウスが好まれるのは丸太が高い断熱性能があることが理由です。
この熱を通しやすい、通しにくいというのを数字に表したものを「熱伝導率」といいます。
(社)日本木製サッシ工業会のHPによりますと材種、熱伝導率(W/m/K)は
木材 0.09〜0.19W/m/K
プラスチック(塩ビ)0.18W/m/K
鉄 40W/m/K
アルミニウム 175W/m/K
となっており、熱の伝わりやすさで比較すると、木材はアルミの約1200分の1の大きな違いがあります。木製サッシは窓枠の熱伝導率が低い木製であることが、結露がしにくい理由です。
ちなみに木製サッシにはペアガラス、トリプルガラス、Low-eガラスなど断熱性の高い窓を採用しているメーカーが多く、木製サッシは窓枠も窓も結露しにくいと考えていいでしょう。
気密性が高く防音性にも優れている
木製サッシの場合、ダブルハングやオーニング、スライダーでも密閉性が高いのが特徴です。むしろ鍵が締まりにくく感じるほど。当然、気密性が高くなるため冷暖房効果も高く維持されます。
気密性が高いことが、防音性にも優れているということになります。音は近年、近隣問題としてあげられることが多く、誰もが気になるところ。その点、木製サッシの気密性は信頼できる性能です。
見た目のデザインも良く、環境に優しい
木製サッシの良さはなんといっても見た目です。特にインテリアデザインがウッドであれば木製サッシほど似合う窓はありません。また開口部を広く取ることもできますし、温かみを感じることもできます。
単純に断熱性能を優先するなら、アルミ樹脂の複合サッシや、樹脂サッシでも十分かもしれませんが、デザインの統一性や自然素材の風合いを大切にするなら、この木製サッシはとてもオススメです。
また、樹脂の使用量を少なく、廃棄処分も木製部分があることでエコで環境に優しいことも魅力の1つです。
木製サッシのデメリットは?
見た目がよくデザイン性、機能面でも優秀な木製サッシ。デメリットももちろんあります。
価格が高いこと。その対策は?
木製サッシを全てに採用したい。と私は住宅事業を始める時に思いましたが、やはり「価格が高い」ことは最大の障害になりました。
弊社は輸入サッシをメインに採用していたので、もしかして国内木製サッシメーカーだと少し廉価品もあるかもしれませんが、アルミサッシとは価格差がどうしてもあります。
特に大きな窓サイズになるとその差は歴然。逆に窓サッシがあってこそインテリアデザイン、木製サッシは外せないと思うのであれば、他の予算を回す価値があるでしょう。
また、私どもがよくやった提案がリビング周りは木製サッシにし、個室などは樹脂サッシにするという方法です。外部からは枠が白など統一できますので、見た目には分かりません。全ての部屋に入れずに共有スペースのみに採用する方法は最も効果的な価格対策といえるでしょう。
防火性能はどうなの?
防火性能についてご心配される方の声を聞くことがあります。燃えるか、燃えないか、燃えやすいか、燃えにくいかというのは火の圧力、量によって変わりますので一概には言えません。
メーカーはさまざまな試験を重ね、火に強い、火に弱くないというデータを出しています。それを信頼するなら防火性能に不安はありませんが、どんなに火に強い商品だからといって木製には変わりありません。
もう1つ論点があるとするなら、防火地域、準防火地域での使用が可能か?です。
現在は法に適合した防火認定を取得した木製サッシで販売されています。法に適合しているということは準じたデータが出ているということ。安心して採用することができます。
木製サッシを採用した施工事例をご紹介
S.123 木の質感を十分に感じる36坪の家 岐阜県
https://www.e-robin.com/works/custom14813/
室内デザインを木の質感で統一した施工事例です。1階天井は梁表しで床はしっとりとしたオーク材、天井はパインの羽目板仕上げです。
「自然素材である木をしっかりと感じられる家に」というオーナー様の希望で、もちろんサッシは木製サッシを採用しました。
写真にあるように基本的にはダブルハング(上げ下げ窓)をメインに採用し、掃き出し窓にはスライディングドアを採用しています。ダブルハングのサイズは1m×75cmです。
腰までの羽目板と建具(クローゼットドアや室内ドア)、そして木製サッシでインテリアデザインの統一感がいいですね。ちなみに木製サッシの窓枠も塗装が可能です。
S.064 ヨーロッパテイストの2世帯住宅 愛知県
https://www.e-robin.com/works/custom14864/
こちらは1階、2階で分けられた2世帯住宅の事例です。2階に木製サッシを採用しています。デザインイメージは重厚なヨーロッパテイストが希望のオーナー様でした。
床のタイル、白い塗り壁、木製サッシの組み合わせとカラーの統一がよい雰囲気を醸し出しています。
掃き出し窓は木製サッシの呼称でいうと、スライディングドアになります。この場合、片方がFIXで片方だけが動くタイプが多いので、設計の際にはスライディングする窓方向を決める必要があります。
スイングドアはパティオドアとも呼ばれ、海外の映画でも見るようないわゆる両開きのドアです。網戸が付かないのがデメリットですが、開放感があって個人的にもオススメの木製サッシです。
S.009 アンティークカット梁のある40坪の家 愛知県
https://www.e-robin.com/works/custom17316/
こちらはアンティークなイメージを大切にしたこだわりの事例です。柱や梁をナタでカットを入れ、ヴィンテージウッドを再現しました。
もちろん窓は木製サッシを採用。ダブルハングをバランスよく配置し、スライディングドアと高さも揃えています。
キッチンからリビングを見るとこのような感じです。バランスのよさが生活のリズムを刻む、そんな家になりました。
S.002 自然素材にアイアンが引き立つ家 愛知県
https://www.e-robin.com/works/custom16661/
今回ご紹介した木製サッシの採用事例は自然素材がよく似合う家が多くを占めていますが、こちらはそれにアイアンも加わっています。
定番のダブルハング、スライディングドア、スイングドアなどに、カーテンレールや吹き抜け手すりはアイアン仕上げ。デザインに意思があり、バランスよい内装になっています。
「和室でも木製サッシは合いますか」とご心配の方もおみえかもしれませんが、まったく問題ありません。むしろ「木造住宅、和室、木製サッシ」はどこか懐かしく、そしてとても温かみのある空間になります。
よくある質問
木製サッシの価格・費用はどのくらいですか?
あくまで目安ですが送料抜きで以下の価格を参考にしてください。
ダブルハング W750ーH1000の近似サイズの商品のみの価格です。(送料は別)
マーヴィン製(現在の呼び名:シグネイチャー) W768-H1016 12万円(税別)
インテグリティ製(現在の呼び名:エレベート)W775-H1022 8万円(税別)
(以前よりずいぶん高くなりました)
手入れは必要ですか?
汚れ、ホコリなどの拭き取りは通常のサッシ(アルミ、樹脂)と何ら変わりありません。ぜひお手入れをし、綺麗に大切にご利用ください。
木ですので不意の雨などのご心配もあるかもしれませんが、気がついた時に拭き取れば問題ありません。もちろん長期間、濡れたままで放置するとシミ、カビの原因になります
結露対策として利用できますか?
はい、アルミ、樹脂サッシに比べ断然、熱伝導率が違いますから結露は出にくいと言えます。
ただ結露は室内・外の温度差と飽和水蒸気量が関係します。家の断熱性能が低い、室内の水蒸気が異常に高いなどという場合は結露する場合があります。
わかりやすい例でいうと、冬場、4人家族が6畳の部屋に加湿器を入れて就寝をすると朝になると窓にうっすら結露がみられるといった場合です。
モダンな住宅に木製サッシは似合いますか?
今回の事例は自然素材をデザインにした住宅が多かったですが、モダンデザインの住宅にも問題ありません。白を基調にした壁や天井、大理石タイルの床に木製サッシを採用した事例もあります(紹介することができずすみません)
網戸は付いていますか?
ダブルハング、スライダー系には付いています。(オプションのメーカーもあるかもです)
また取り付けが可能です。ただ、スライディングドア(回転型)は網戸をつける位置がないため、取り付けできない場合があります。その場合は室内側に後付けで検討することになります。
室外にシャッターは取り付け可能ですか?
可能です。ただ一体型はありませんので全て後付けタイプのシャッターを別手配になります。これは木製シャッターもありますがこれまでは国内メーカーのアルミ製を採用してきました。
ただスライダータイプは窓を開けて、手動でシャッターの操作が可能ですがスライディングドアの場合はそのような動きができませんので、電動シャッターを採用することになります。
またダブルハングの場合、外側に網戸がありその網戸を外さないとシャッターを操作することができません。台風時や暴風雨対策であればその面倒も許容するか、電動にするかですね。
ただダブルハングを全て電動にするのは、コストバランスをみても非現実的だと思います。
まとめ
「木製サッシの選択肢は頭になかった」、「サッシは樹脂やアルミだと思っていた」という方は少なくないと思います。設計やビルダーでも木製サッシってすごくいいよ、と思っていない限りなかなか提案しない商品だと思います。
私はたまたま最初にこの木製サッシとその魅力を感じてしまったので、積極的に提案し採用していただきました。建築後、10年以上経った今でも、「開け閉めにちょっと重いけど、木製サッシはやっぱいいよね」と聞くと私も嬉しくなります。
国内製品でも輸入品でも木製サッシは日進月歩、進化していますのでぜひ機会があれば体感し、検討してみてはいかがでしょうか。
(蜘手健介)
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