660(21)住宅事業の未来 リフォーム事業の競合は?(2023.5.10)
野村證券が6月22日にリリースしたニュースによれば、新設住宅の着工戸数は2022年度の86万戸、2030年度には74万戸、2040年度には55万戸(現在の約6割)まで減少する見込み、リフォーム市場は2040年には現在の7.6兆円規模から8兆円規模までわずかながらに成長する。
また建設業は時間外労働の上限規制が適用される2024年を目前にしているが、住宅建設の担い手である技能者は2020年約82万人から2040年には約6割の51万人まで減少する見通しで結果的に住宅市場と供給力の変化は同時に進行する状態となる。
技能者不足の方が急激に減少するため2025年以降は深刻な人手不足になり、2040年に55万戸を維持するためには現在の1.3倍の生産性向上が求められるとしている。直近10年間、建設現場ではさまざまな生産性向上に向けた取り組みが行われてきたが、人手不足が解消されていないことを踏まえると今後は業界を挙げての思い切った改革が必要になる、とレポートは結論付けている。
このレポートの数字の妥当性はともかく、新築は減るがそれ以上に職人が不足する、リフォームは微増というのは業界に身を置く者の肌感として間違っていない。
ハウスメーカーは棟数の減少を見越し、単価を大きく上げる戦略に動いているが、この流れに追いつけていない工務店は少なくない。特徴もブランド力もない、ただ価格競争力だけで勝ってきた企業の退廃が現在の流れになっている。
私が業界の危惧を付け加えるとしたら注文住宅従事者の減少も進行することだ。住宅営業、建築士・建築家を志し身を投じたが顧客対応や精神的負担で離職、業界に戻ってこないという若者も増えている。
ここ数年、急激に顧客の知識が高まってきてきた。プロの私たちより詳しくトレンドを掴んでいることもあるほどだ。各社が競って公開しているコラムなどの知識系の記事や動画の影響があるのだろうと思う。これは悪いことではなくむしろ良いことだと思う。しかし中にはクレームの付け方、訴訟や金額交渉の仕方、ノウハウなどをまとめた記事もあるとも聞いた。
新築はライフイベントの1つで、地方では「いつかは持ち家」という思考は強く残っている。消費者が慎重になるのは明白。Google口コミやSNSなどで気軽に情報公開ができる時代だ。大きな金額を扱う注文住宅業界は今後、複雑で繊細な対応が求められる時代になってきた。
新築住宅の建築数は減り、職人も減る。また従事する者も減り経営者も疲弊する時代に私たちはどのように指針を取ればいいか。悩ましい現実が今後も続くだろう。
閑話休題。
「7月からリフォーム集客が悪く、8月、9月も改善しない」という声を多く耳にした。野村総研のレポートにはリフォーム市場は長期的には微増するのだが、短期的に集客が変動するのは何が要因だろうか。
総務省統計局が10月6日に発表した8月の家計調査によれば8月の消費支出で増加項目に鉄道運賃、航空運賃、外国パック旅行、国内パック旅行があった。これは7月の調査からも同じ傾向で「多くの人が7月、8月は旅行出費が重なった」ということがいえる。7月の減少項目では外壁・外構工事が含まれていた。
聞いた話によると8月の「じゃらん」の売り上げは通月1.4倍だったそうだ。旅行出費と契約時期と出費時期が必ずしも一致しないリフォーム工事では単純比較は難しいが、7月の家計支出のデータから読み取ると「旅行増、リフォーム減」であった。
調べてみると旅行業の市場規模は小さくない。国交相の5月17日の「旅行・観光消費動向調査」によると1−3月期で4.2兆円、コロナ禍以前と同じ規模になっており年間25兆円程度になる。国外旅行の2.5兆円(JTB1月26日にリリース)を足すと27.5兆円でリフォーム市場規模の3.6倍とかなり大きい。
最近、自動車業界の人からも「中古自動車の販売が悪い」と聞いた。本人たちは「ビッグモーターの影響か」と言っていたが、中古自動車市場は4兆円程度。こちらも規模的に旅行支出の影響を大きく受けたのではないだろうか。
逆に旅行シーズンでない時期はリフォーム集客が上がる時期だと想定できる。しかしカレンダーを見ると秋も三連休が多く、まだまだコロナ禍で押さえつけられていた旅行熱は冷めそうにない。新築事業者も頭が痛いが、リフォーム事業者も頭が痛い日が続きそうである。
KUMODE
最高経営責任者 蜘手 健介
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