(52)小事に騒がず大事を見極める。民意は常に正しいか(2025.3.31)
最近、ニュースでは石破総理が新人議員に個人的に渡したという「10万円の商品券」の問題について連日、取り上げられている。内閣支持率は急落し「政権の求心力がもたないのでは」といった論調も出てきた。年度末の大切な時期にそんな話題かと辟易するが経営者としてこの状況を見ると、ついこう思ってしまう。
それ、本当に重要な話なのか?
政権支持率を揺るがすほどの「問題」として扱われる出来事の多くは、小さな“つまずき”である。もちろん、丁寧な説明や信頼回復は政治の責任だが、もっと大局的な課題──少子高齢化、地域経済、エネルギー政策などに目を向けるべき時に、小事ばかりが拡大解釈されているようにも見える。
これは政治だけの話ではない。私たち住宅リフォーム業界における経営でも、「声の大きな不満」や「目先の数字」に過度に引っ張られると、企業の方向性を見誤る危険がある。
コメンテイターやメデイアは言う。
「民意が届いているか?」と。
そもそも「民意」とは何か。それは国民の総意であり、政治において無視できないもの。しかし、現実にはメディアやSNSによって煽られた一時的な“空気”が民意と見なされる場面も多い。「民意=正しい判断」とは限らない。
実際、民意によって国の進路が大きく動いた例は国内外に数多くある。
たとえば日本では、2005年の小泉内閣による「郵政民営化」が挙げられる。「是か非か」を国民に問う形で総選挙を行い、民意を背景に大胆な改革を断行した。これは民意とリーダーのビジョンが重なった成功例だ。
逆に、2011年の東日本大震災後の「脱原発」ムードに押された菅政権は、場当たり的な判断が続き、結果的にエネルギー政策の方向性を曖昧にした。これは民意に引っ張られすぎて本質を見失った例だ。
国外では、イギリスのEU離脱──いわゆる「ブレグジット」も記憶に新しい。2016年の国民投票で、僅差でEU離脱が決定された。多くの国民が移民政策や主権回復を理由に離脱を選んだが、投票後に「内容を十分理解していなかった」「離脱による経済的損失が大きすぎる」と後悔する声も多く上がった。企業の本社機能や金融拠点がEU域外となったことで混乱が続き、結局のところ、一時の民意が長期の安定を損なった例となってしまった。
一方で、ドイツのメルケル首相は、2015年に大量のシリア難民を受け入れるという決断を下した。当時は国内で激しい反発があったが、彼女は「人道的責任を果たす」という信念を貫いた。その後、ドイツは就労支援や教育制度の整備を通じて、難民の社会統合を進め、今では他国のモデルとされている。
政治も経営も、「声に耳を傾けること」と「声に従うこと」は別物だ。経営者もまた、社員や顧客の意見を大切にしつつ、本当に見るべき“大事”を見失わない軸を持たなければならない。
リフォーム業においても、顧客アンケートやクレーム対応、売上の波など、小さな“声”や“現象”は日々発生する。しかし、それに対して右往左往していては、チームの方向性も組織の文化もブレてしまう。短期の反応ではなく、長期的な価値創出──すなわち**「真の顧客満足」や「信頼に基づく紹介の連鎖」**にこそ集中すべきだ。
ここで、アメリカの第34代大統領・ドワイト・アイゼンハワーじゃ「重要なことはめったに緊急でなく、緊急なことはめったに重要でない。」と言葉を残した。
これは経営の現場でも痛感する真理だ。「緊急=対応すべきこと」と捉えがちだが、本当に大切なのは“重要だけれど今すぐではない”ことに、どれだけ目を向けられるかだ。
情報過多の現代だからこそ、私たちは「小事」に騒がず、「大事」に集中する覚悟が求められている。
経営者は人気取りではなく、ビジョンを語る人間でありたい。民意のような“声”を羅針盤にしつつも、進むべき航路は自らが決める──。それこそが信頼を築く経営の第一歩だ。

最高経営責任者 蜘手 健介
ロビンのリフォーム・リノベーションサービス一覧
ロビンは、換気扇レンジフードの交換リフォームから、設計士がご提案するフルリノベーション、注文住宅まで幅広く対応しております。
それぞれのサービスの紹介、施工事例、お客様の声などをご覧ください。