(47)イヤミスと25年前の約束(2025.2.24)
高校生の頃、親父の書棚にあった吉川英治著の「宮本武蔵」で歴史小説に興味を持ってから山岡荘八著の「伊達政宗」や「徳川家康」、大人になって司馬遼太郎の「竜馬がいく」や「坂の上の雲」、北方謙三の「三国志」など読み込んだ。今思えば若い頃は「志を持ち小事にこだわらず大事を成す」というテーマが好きだった。例えば竜馬の脱藩は田舎の長男で生まれた私に大きな勇気をくれた。
他にもアガサ・クリスティ、ダニエル・キイス、パトリシア・コーンウェルなどのハズレのない作家や三島由紀夫、五木寛之など気合いの入った作家の本も多く読んだ。事業を始めてからビジネスに関する本、他にも宗教本、旅本、コラム、古典なども読んだ。1日、2〜3冊を読むことも日常的だった。
最近は落ち着いて読書をすることもなかったが、娘から「面白いから読んでみて」と2冊のミステリー小説を渡された。
その2冊とは夕木春央の「方舟」と湊かなえの「リバース」。
ストーリー進行も明快で伏線もしっかりと回収されていて面白かった。ラノベ(10代〜20代の若者をターゲットにした娯楽小説)や話題となる書籍は時代や世相が反映されているものが多い。
この2冊は陰鬱な気分になる本で私の読後の感想は「性格悪いなこの作者」だった。
これが今、話題の嫌な気分になるミステリー「イヤミス」というらしい。そして湊かなえさんは「イヤミスの女王」なのだそうだ。
陰鬱な気分になる本は嫌いではない。事実、面白かった。気になってネットで検索すると湊さんのインタビュー動画が公開されていた。年は私と近い、朗らかで明るい女性だった。
「黒い気持ちや人を妬んだり恨んだりする気持ちは誰でも持っているというのがスタート。それを表に出ないようにして隠し、折り合いをつけて生きていると思う。それをどう覆すかから着想に入る」
まさに今の世相である。折り合いがつけらない人たちが増え、生きにくい時代になった。
「イヤミス」は時代の本質を突いている。若い人だけでなく世代を超え、多くの人は共感するのだろうと感じた次第。
閑話休題。
思うところあり3月中に法人設立をすることになり、司法書士に依頼をしたところ「実印」が必要だということを失念していた。このような業務は管理本部にお願いしていたが担当が産休、他の人も手一杯ということで私が自分で急ぎ手配することになった。
「実印か、どこに依頼していたのかな」と管理本部に聞いてみると大阪にある印鑑屋さんに依頼しているということだった。
そこで思い出したことがあった。
20代の頃、風水や四柱推命、九星気学や姓名判断などに興味を持った時期があった。そしてさまざまな方に運勢を見てもらった。苦しかったのか、悩んでいたのか、大いに迷っていたのか、その全てなのか。自分の運命を教えてくれる「何か」を探していたのだろう。
「大器晩成。若いうちは苦労をする」 皆に同じことを言われた。
25年前、今の会社を設立するにあたりある方から「実印は大切」と言われた。そこで運勢判断・開運をしてくれる印鑑屋さんを探し、大阪まで行った。色々な話を聞き、私の相談事まで受けてもらった。
私はスタートラインに立っていた。印鑑で開運ができると信じていたわけではないが、すがりたい気持ちだった。お金に余裕などなかった。どの象牙にしようか悩んでいると
「印鑑は一生に何回も作らないが、身の丈にあったものでいい」と言われた。
結果的に価格が一番安価な象牙で注文した。それがその時の私の身の丈だった(それでも近所の印鑑屋よりは高価だったが)
次に印鑑を作る時が来たら、一番高いやつが身の丈に合った男になる。帰りの新幹線の普通席でそう思った。あれから25年。色々なことはあったがお陰様でここまで経営を持続することができた。
今回、印鑑を発注するにあたり地元・岐阜で印鑑屋さんを探し直感で決めた。早速、翌日に訪問。姓名判断や字画数などを見て頂いた。
「蜘手さんは大器晩成型ですね。晩成の年齢は55歳からです」
ようやく来年からである。私は今回、印鑑依頼するにあたって決めていたことがあった。
「実印は一番、高価な象牙でお願いします。」
昔とは相場も上がっているので価格には一驚したが、それだけは譲れなかった。
デジタル社会になり印鑑の必要性は低くなるかもしれないが、そんなことは関係ない。25年前の蜘手健介との約束を1つ、果たせた気がした。見ている景色はその時と全く違うが、私は常にスタートラインに立っている。

最高経営責任者 蜘手 健介
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