(5)「ゆとり教育」と「ゆとり労働」未来が待つものは?(2024.5.6)
今でこそ年間ラウンド数が多いゴルフだが、起業した28歳から36歳の8年は一切、クラブを握らなかった。
忙しかった、大変だった、それどころじゃなかったというのもその理由だが、仕事に夢中だったという表現の方が正しい。
その時期を共にした社員もとてつもない仕事量をギリギリの状態でこなしてくれた。
残業、休み出勤は当たり前。当時はそんな言葉はなかったがブラック企業でブラック社員の集まりだった。
それが辛くて辞める社員もいたがその時期を「しんどかったけど、楽しかった」という社員もいた。
私も夢中だったが、社員も夢中だったのだと思う。その8年間に在籍した社員は現在、重要な役職やポジションにいる。
中小企業の起業時、創業期の仕事環境を知らない人たちは「過重労働の美談」と嘲笑するが、ゼロから1を立ち上げるとはそういうもので、そうでなければ物事は前に進んでいかないのである。
4月から残業時間の上限規制が始まった。ここ数年、残業、休日出勤対策をしてきたので、業務体制に大きな変更はないが今まで以上に仕事をする時間が削られる社員もいる。
そんな中、先日ある社員からこのような声を聞いた。
「仕事に対するモチベーションをどのように維持したらいいのか、悩んでいます」 話を聞くと
「早く帰ろ、残業するな、休日は休め。よくわかります。でも現状、それは難しいしもっと仕事がしたい。残業はよくないことだと思うのですが、縛られることなく仕事をしたい」ということだった。
率直にいえば経営者としては頼もしい言葉で嬉しく思った。社会的には反するかもしれないが偽りない気持ちである。
と、同時に常に挑戦者であり開拓者であるという自負が私自身に薄れてきたのではないかということに気づいた。時間にこだわるわけではないが、特に弊社のような住宅事業において労働時間の短縮はマイナスをゼロに近づける方法はあっても、大きなプラスを生み出す前提条件は夢中になって仕事ができる環境である。おりこうさんになってどうすると自分に言い聞かせた次第。
閑話休題
政府は2010年まで続いた「ゆとり教育」の総括を明確にはしていないが紛れもなく「世紀の愚策」の1つである。しかし愚策であってもトライしないよりマシ。しかしそれを総括し、そこから何を学び次に活かすか。そこは大きな疑問である。
ネット版日経ビジネスの記事「データでわかった「ゆとり教育」の本当の影響」がとても興味深いものだった。
佐野晋平著の『教育投資の経済学』にゆとり教育についての3つのポイントとして
1 学習指導要項の改定は成果に影響を与える
2 授業時間の長さと合格実績には相関がある
3 授業時間が短いと教育達成が低くなる
があり、 続けて「ゆとり教育」には否定的なニュアンスがあるがそれは思い込みや経験則からくるイメージも多く、データを基に論理的分析で結果を導かなくてはいけない。結論をいえば授業時間と結果(合格実績やその後の教育達成)は相関する(関係がある)とした。
例えば学習指導要綱は10年に1度改訂されるが、授業時間や教える内容が変化する。
それによると小学六年生の年間総授業時間は1968年は1085時間、77年には1015時間、1998年は945時間と減少し2020年時点では1015時間に増加している。中学校でも同じ傾向である。
また授業時間数は公立と私立で異なっていること、世帯主が大卒の場合と比べ、高卒の親の場合では日曜日の勉強時間が減ることも記されている。
データ分析をすると授業時間が長ければ(インプット)、教育レベルも上がる(アウトプット)と結論づけている。
これは学習の方法や基礎学力が少ない子供のことで、応用学力や専門性分野におけることはまた違うかもしれない。
しかし基礎学力がないというのは明らかに「質より量をこなさないといけない時期」を指すことにほかならない。
話を冒頭に戻すが、仕事がまだ身についていない「基礎仕事力」が小さい若年層にとって労働時間はとても重要。効率や生産性向上は「基礎仕事力」が身についてから得られるものだ。
「ゆとり教育」は面白い社会実験だったが、「ゆとり労働」への実験はやめといた方がいい。
国は経済政策などBtoBの大手とだけやってくれればいいのにと思う。優遇された補助金や助成金にも文句を言わないし、裏金を引っ張っても、まあ仕事をしてくれればいいとしよう。
その代わり、中小企業はすなわち国民生活そのもの。私たちの経済活動の邪魔をせず自我と自立と自己責任を重んじ、自由にやらせてほしいと思う次第である。
最高経営責任者 蜘手 健介
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