バリアフリーリフォームのポイントは?『プロならここを見る』アイデアと工夫をご紹介!
多くの人たちにとってくつろぎの空間であるはずの住まい。実は毎年多くの不慮の事故が家庭内で起きていることをご存じでしょうか?その中でも高齢者による「転倒・転落」は最も多いといわれています。
場所によっては命も落としかねない家庭内事故、あらかじめ危険性を減らすことができれば、高齢者もご家族も安心して生活することができますよね。家庭内事故を防ぎ、高齢者も安全に生活できるように住まいを改修するのがバリアフリーリフォームです。
「今後、ご両親との同居を考えている」、「老後の生活を見据えると今のままでは心配」という方にもバリアフリーリフォームを知っていただきたいです。家庭内ではどのような事故が起こるリスクがあり、どういった対策が必要なのかを見ていきましょう。
目次
バリアフリーリフォームの必要性
バリアフリーとは、バリア(障壁)を取り除くことを意味し、高齢者や障がい者が利用しやすく改善することを指します。バリアフリーリフォームは家の中に存在する様々な障害を解消するためのリフォームです。例えば、段差のある玄関にスロープや手すりを取り付けて、転倒を防止するためのリフォームも該当します。
高齢になると家庭内事故のリスクが高まることが指摘されています。中でも「転倒・転落」による死亡者数、救急搬送者数は一番多く、継続的に発生しています。高齢者の転倒・転落は骨折や頭部外傷等の重大な障害を招き、介護が必要になることもあります。
また、日本国内の65歳以上の高齢者人口は前年対比で22万人増加し過去最多、総人口に占める割合も29.1%と過去最高です。(※総務省統計局 2021年9月時点)
これからますます高齢社会が進むため、家庭内事故の発生数も多くなることが予想されます。
実際にRobinでもたくさんのお客様からバリアフリーリフォームのご相談をいただきます。「足腰の不安」や「ご家族の介護」によるご相談が多いですが、近年では40~50代のお客様を中心に「高齢の両親が生活しやすいように」、「老後を見据えて」といったご相談も寄せられます。
事故や病気で自由に動けなくなってしまってからではなく、いつもまでも安心して快適な生活を送るための備えとしても、バリアフリーリフォームの必要性は今後ますます高まることが考えられます。
バリアフリーリフォームのポイント
家庭内にはどういった危険が潜んでおり、事故を未然に防ぐ為にはどこに気を付けたらよいのか、詳しく見ていきましょう。それぞれの項目でおさえるポイントもありますので参考にして下さい。
手すりの設置
手すりの取り付けはRobinでも一番よくご相談いただくバリアフリーリフォームです。足腰が弱くなると自分の体を支えるのが難しくなるため、手すりがあると便利です。手すりは転倒やつまずきによる怪我のリスクをおさえ、気になる個所にも個別で取り付けられるため、バリアフリーリフォームとしても取り入れやすいのです。
設置場所としては、玄関・階段・廊下・トイレ・浴室などにあると便利です。I字・L字の形状の手すりは玄関・トイレ・浴室などに設置されており、立ち上がる・座るといった動作を補助する際に使用します。また、階段や廊下に設置する長いタイプの手すりは歩行を補助する役割があります。
取り付ける時の注意点は、設置場所に応じて、使う人の動作や背丈に合わせることが大切です。取り付け工事は以下の通りです。
壁に下地がある場合はビスで固定ができますが、下地となる合板がない壁の場合はビスでの固定ができません。木造住宅の壁の多くは石膏ボードでできています。間柱と呼ばれる骨組の柱に薄い石膏の板を固定していき壁を作っていきます。一見壁ですが、間柱のない部分は石膏ボードと空洞、または断熱材が入っているだけなので、ビスを刺してもしっかりと固定することが出来ません。ですが、補強部材を使うことで下地がない壁でも取り付けることができます。
また、住まいの改修を考えているが、今すぐに手すりを取り付ける予定はない(≒将来的には取り付けが必要だと考えている)という場合でも、工事の際に一工夫することで、将来的に手すりを取り付けるための備えができます。
あらかじめ壁に下地を入れておくことで、後々手すりの取り付けが必要になった場合にもビスの取り付けに困りません。今すぐの取り付けは必要ないけれど、今後取り付けの予定や検討をされているようでしたら、こうした方法もありますので、参考にしていただければと思います。
床の段差解消
手すりの設置に次いでご相談をいただくのが、段差解消のリフォームです。わずかな段差であっても足腰の弱い方にとって段差は体への負担になります。段差解消が必要な部分としては、各部屋の出入り口や洗面所、浴室などがあげられます。
解消方法としては、造作床材の取り付けやスロープを設置する工事から、敷居を取り除き間取りそのものを変更するという、全面改修を伴うリフォームまで様々です。
生活空間をフラットにすることで、つまずきによる転倒事故のリスクを減らすことができますので、解消個所に合わせた適切なリフォームを行いましょう。
水まわりのリフォーム
浴室改修
浴室は家庭内事故がよく起きる場所の一つで、Robinでもバリアフリーリフォームのご相談が多いです。特に、在来工法の古い浴室ですと、出入口には脱衣所への浸水を防ぐ段差があるため、つまずいて転倒するリスクが高いです。床がタイルですと、一歩入った瞬間からヒヤッとして冷たく、濡れると滑りやすいです。
また、古い浴室浴の場合は浴槽も深いタイプが多いため、浴槽をまたぐ時、転倒に繋がる危険性があります。浴室での転倒事故を防ぐためにも、床材はすべりにくく、肌触りのいいものを選ぶ必要があります。寒さで体が冷えてしまわないよう、保温機能に優れた床材もおすすめです。
そこで取り入れていただきたいのが、保温機能にも優れたユニットバスへのリフォームです。
例えばTOTOのユニットバスですと、足元がヒヤっとしない「ほっカラリ床」や、保温効果の高い「魔法びん浴槽」が搭載されています。
さらに、脱衣所や浴室に浴室暖房乾燥機を設置するとより効果的です。入浴前から使用することで浴室の予備暖房にもなり、他の部屋との温度差も縮められます。保温機能が高い浴室にリフォームすることで、転倒やヒートショックのリスクからも身を守ることができます。
浴室リフォームのポイントや事例は下記コラムでもご紹介しております
冬の寒いお風呂はもう嫌だ!対策とぽかぽかお風呂リフォームって?
トイレ
トイレは他の空間よりも狭く、使用する時は立ち座りの動作もあるため、転倒が発生しやすい場所として注意が必要です。特に和式トイレの場合は、トイレでかがむ姿勢は足腰の弱った方には大きな負担になります。これが洋式トイレに変わるだけで体への負担も減りますので、バリアフリーリフォームとして、洋式トイレへの変更は必要不可欠です。
また、トイレの床にも滑りにくく、清潔さを維持しやすい床材を選ぶことが大切です。おすすめの床材はクッションフロアです。ビニールの表面材にクッション材が裏打ちされているため、適度な弾力性があります。さらに、トイレのスペースを確保して、少しでも身動きがとりやすくしたいという場合は、タンクレストイレを選ぶこともおすすめです。タンクの分だけ幅・奥行き・高さに余裕が出るため、トイレも広くなります。
Robin設計士が提案するバリアフリーリフォーム
さて、ここからは一級建築士事務所だからこそ、ぜひ知っていただきたい、バリアフリーリフォームのポイントや工夫も一緒にご紹介したいと思います。
温度差の解消
冬場は暖かいリビングから寒い脱衣所や浴室へ移動すると、急激な温度の変化によって血圧が上下に大きく変動することで、ヒートショックを引き起こすリスクがあります。
特に高齢者は血圧の変動が生じやすい傾向があるため、注意が必要です。これらのリスクを未然に防ぐためには、部屋と部屋との温度差をできるだけ小さくして、家の中に寒い場所を作らないようにすることが求められます。以下は設計士がオススメする、温度差解消のリフォームポイントですので、ぜひ参考にしてくださいね。
・浴室、寝室、水まわりの動線を短くする
・断熱材で熱の移動を遮る
・窓のリフォーム(サッシの交換、内窓の設置)
断熱材「セルロースファイバー」の詳しいご紹介コラムはこちら
セルロースファイバーは最強の断熱材!メリットデメリットをプロがガイド
階段の架け替え
昔ながらの住宅ですと、階段の空間は狭く、階段は急で踏み板の幅も狭いということが多いです。こうした階段の昇降は高齢の方には負担となり、転倒・転落のリスクも高いです。
踏み板幅を確保し、勾配も緩やかな階段に架け替えることで、楽に上り下りができるようになり、安全性も高めることができます。
注意点としては、階段を架け替える場合、既存の階段を解体して新たな階段を設置する工事が必要になります。勾配を緩やかにすることで、階段に使用する面積もこれまで以上に必要となるため、1階で確保できる空間面積や家の構造をよく確認した上で工事を行う必要があります。
間取りの変更
フルリフォームの場合は、Robin設計士がおすすめする、以下のポイントもぜひバリアフリーリフォームで参考にしていただきたいです。
・階段の使用頻度を減らす
・日常生活が1階で完結する間取り
寝室が2階にある場合、毎日1階と2階を行き来するため、常に転倒・転落の心配があります。階段の昇降は体にも負担がかかりますし、危険性を考えると階段を使わなくて済むライフスタイルが安心ですよね。
これを実現できるのが、間取りプランの変更です。これまで2階にあった寝室を1階に造ることで、階段を使用しなくて済むため、転倒・転落のリスクを減らすことができます。また、寝室からLDK、トイレなどに移動しやすい動線を造ることで、足元に不安がある場合でも快適に生活することができます。
ドアの改修
ドアが開き戸の場合、引き戸や折り戸に変更することも重要です。特に引き戸の場合は、車いすの方でも自力で開閉することができ、開けたドアも出入りの邪魔になりません。
ここでRobin設計士がオススメしたいのが、上吊り引き戸です。上吊り引き戸は天井や壁の上部にレールをつけて、扉を上から吊るすように設置するドアです。床にレールがないため、段差の心配もありません。注意点としては、引き戸を設置する場合は引き込みスペースが必要ですので、スペースを考慮して間取りプランを考えましょう。
照明計画の見直し
バリアフリーリフォームで意外と見落とされてしまうのが照明です。年を重ねると身体機能が低下していくのと同じで、視覚も徐々に低下していきます。視覚が低下することで目が順応するまでに時間がかかり、段差もわかりづらく転倒して事故につながります。
照明も以下の点に気を付けて、バリアフリーリフォームを計画することが重要です。
・照度を確保して、部屋全体が均一に明るくなるようにする
・間接照明や補助照明の活用
・調光器の設置
この他にも、打合せ時に、ご両親との同居予定や、ご家族の持病の有無などもヒアリングさせていただき、お客様にとっても一番良いリフォームプランをご提案させて頂くことを心がけております。
バリアフリーリフォームの施工事例
R.058 バリアフリーも叶えた快適LDK 岐阜県岐阜市
ご高齢のお母様と50代のご夫婦が住まわれるお家の施工事例です。1階はバリアフリーにするためにフルフラットになっています。お部屋からLDK、トイレなどの水廻りに一直線に移動できる動線を実現しました。
生活動線上で1か所残ってしまった段差は造作で解消しました。今回のリフォームでは既存階段をそのまま利用するため、お母様の居室である既存和室との高低差が残ってしまいましたが、緩やかな勾配のスロープを造作することで解決しました。
LDKの西側に残った抜けない柱を利用して入り口を挟むように格子壁を設け、間に床下地を造作しフローリングを斜めに施工しました。
R.050 間取り変更で叶えた暖かなLDKで暮らしやすく 岐阜県揖斐郡
R.050 間取り変更で叶えた暖かなLDKで暮らしやすく 岐阜県揖斐郡
築48年の母屋に移り住むにあたり、間取りや住宅設備、性能面など様々なお悩みがありました。
「将来の老後の事も見据えたリフォームがしたい」というご希望もありましたので、各所でバリアフリーに配慮しています。トイレなどの水廻りは1階のご夫婦それぞれの個室からすぐアクセスできる位置に配置しました。
老後を考慮して要所にバリアフリーの配慮をしたこと、住居内をスムーズに行き来できる動線の確保、断熱性能の向上リフォームを行ったことで”今”はもちろん、”これから”も快適に暮らせる家が完成しました。
まとめ
以上がRobin設計士の提案するバリアフリーリフォームのポイントと工夫です。早めの備えでライフスタイルに合わせたバリアフリーリフォームを実現していただければ幸いです。その他にもバリアフリーリフォームのご相談は経験豊富なRobinにお問合せくださいね。
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